Interview
まずアイハーツ株式会社さんはどんな会社なのか簡単に教えてください。
2010年にスマートフォンに特化した広告代理店として創業しました。2010年というのはガラケーの時代が終わってAndroidやiPhoneが日本に上陸するという転換期でした。もともと私はガラケーの方の広告代理店にいたのですが当時そこで役員をやっていまして「これから間違いなく小さなパソコンがここに集約されるのでPCとガラケーのクライアントがそれぞれここに集まってくるぞ」というのを予見しました。出来ることが増えますから、ここに広告というのがどっちみち盛んになるのが見えていました。そこで受け皿を作りましょうというお話をしていたのですが、他社では当時はまだ無かったのです。
そう言った意味ではなかなか当時の会社さんに受け入れていただけなかったので、「じゃあ自分でやります」ということで独立をさせていただいてそれで作ったという経緯があります。
スマートフォンに出てくる皆さんも見られているような広告は実は大手さんでもうちが経由していて、うちが仕込んでいるのを見ていただいているというものも結構ありますね。
大手ばかりをやらせていただいているので、そういうところの広告やバナーもうちが作っていたりします。
おそらく事業戦略ということについては野田社長も大変お強いと思いますが、どうしても経営者を悩ませるのは「人」です。人で悩まれる経営者様は本当に多いのですが、事業戦略、経営戦略ではない「人での悩み」は、差し支えのない範囲でどんな悩み事をされていたか聞かせていただけますか?
そうですね。やはりみんな人それぞれ幸せの形というのが違うな、ということは感じました。
経営者としてはこれをしてあげたら喜んでいただけるんじゃないかということが、人によって給与面が良い、休みが欲しい、福利厚生があって融通が効く方が良い、やりたいことをやれたら良いとか。でもそのやりたいことだってコロコロ変わって来るんですよ。
なので私はどちらかというと、そういう人との会話をEvernoteなどでとにかくメモをして「何月何日にあなたは何を言ってましたよね」と。
これは変な裏を取るわけではなくて、記録をして目標を共有しておかないと社員が何十人もいると忘れてしまうのは失礼だと思ってやっているのですが、半年後に聞くと「いや、そんなことは言っていません」と言われることがあり「認識がちょっと違うんじゃないですか?」となることもよくあるので、これは難しいなと思いました。
今年13年目になりましたが、何が難しいと言って人それぞれ幸せや満足する形が違うということでしょうか?
それも刻々と変わっていくということですね。そうすると前提条件が常に変わってしまうから疲れますよね。
疲れますね。給料を上げたとしても、その瞬間、1週間くらいですね。1回上げたら下げられないということは感じましたね。
経営者の悩みが10あるとすると、人の悩みはどれくらいですか?
人の悩みが半分あります。やはりビジネスが上手く行くためには、経営者やリーダーとして同じベクトルを向いてもらいたいわけじゃないですか。こちらとしてはまず何の事業をやったら食べていけるのかということで我々は必死じゃないですか。ただその中でやっと見つかったと。でもこれも先ほどのお話と一緒でみんなの心がついてこない。「私はやりたい」「私はそんなに興味がない」「やりたいとは思わない」様々なのです。
じゃあ「行くぞ!フォローミー!」と言ってジャンヌ・ダルクじゃないですが、同じ方向に人を向かすというのが、本当に半分くらい労力がかかります。
そうですよね。本当に人で悩まれる経営者様は多いのですが、よく都市伝説のように従業員100人で人事専任一人とよく言われるのですが、やはり事業を成長させていく中で人事を専任で一人置いて同じように月給を払っていくというのは難しいですよね。
難しいです。周りが「あの人何してるんですか?」と言うんですよ。
そうですよね。
「すごく暇そうにしているし定時に帰るし、僕らだけ働かされている気がするんですけど」と。
その方は専任したことが2回ほどあって、その方はその方で察して悩んでらっしゃいます。
「私ここにいていいんでしょうか?」と。
「いいんだよ。逆に居てもらわないと困る」みたいなことは何度か経験しました。
なるほどそう言ったご経験があるのですね。
今回は田中先生との出会いがあるのですが、そもそもはどんな話から田中先生と出会われたのですか?
ある別の先生から田中先生をご紹介いただいて、それがご縁のきっかけですね。
当初はどういうミッションでもともとスタートしたのですか?
率直に申し上げると、うちの役員が田中先生のお知り合いの社労士の先生と意気投合して「この人はいいぞ。この人の紹介する人だったら間違いない」と言うことで「もう今日から来るか?」「え?今日から?」と言うのが出会いでした。
私はお名前もご面談もまだで「えっ?そうなんですか?」と言う感じでした。
その役員がもともと大手企業の執行役みたいなクラスの方で、企業の上場請負人のようなすごい方でした。
私のその方に惚れ込んで来ていただいているので、その方がおっしゃるならと言うことで二つ返事で。
では社長よりちょっとベテランの方がいらっしゃることになったわけですね。
自分の親父と同じ年齢ですね。75歳です。
そう言う方を取締役に置かれるのは素晴らしいですね。
私は社長なのですが、怒られています。
その自分のお父さんのような取締役の方が「この先生は良いから」と言うことで連れて来られたのが田中先生と言うことですね。
最初スタートした時は、何をお任せさせていたのですか?
逆に何をお任せしたら良いのかわからなくて、当時はまずちょっと入っていただいて、大変田中先生には失礼なんですけど、田中先生が手探りでご自分の仕事を見つけていただいたんじゃないかな、と言うのが本音です。
こちらとしては格好もつけたいし準備もしたいのですが、何も出来ない状態で恥ずかしい思いから私は始まっています。
「この会社大丈夫?」みたいな、多分そこからだったと思います。
その時から週に一回だったんでしたっけ?
当初は二回でした。
最初から正社員では雇われなかったのですか
そうですね。最初はどちらかと言うと正社員でのポストを作るものと思い込んでいたので、それを外部に委託して、会社の人事周りのことをやっていただくのは消費が高いと個人的には思っていたのです。
やはり社員と言うのはいろんな悩みを人事に相談してくるじゃないですか?
代表である私が後から知るみたいなことも結構あって、かなりパーソナルなことをおっしゃられる社員さんが多い印象があるので、それを大変失礼ながら週に2回でどこまでヒアリングが出来るのか、やはり信頼関係が成り立たないと彼らも本音を言わないだろうと思っていました。
だからどちらかというと社労士の先生だから入社の手続きとか退職の手続きとか労働局に対する手続きとか、そう言ったことをやっていただけるのだろうとおぼろながら考えていました。
一言で言うと同じように雇用されている身分じゃないと本音も言わないだろうし、毎日いないんだからコミュニケーションも難しいだろう、たまに来て事務処理や手続きかな?という感じですか?
すみません。最初は本当にそう思っていました。
社長がおっしゃるようなことを皆さんおっしゃられるんですよ。
ところが伴走者が現れて、最初は伴走しているかもわからなかったのかも知れませんが、時系列が進んでいくとその辺の変化はありましたか?
これは素晴らしかったですね。びっくりしましたね。まず田中先生の人間力だと思います。後、傾聴力というか。
まず経営者ってどうしても「やるぞ」「やれよ」という思いがあるので、そのエネルギーがなかったら前に進めません。
それは当然です。それがなければ経営者になれませんよね。
だから聞きはするけれど「わかった。でもやれ」となっちゃうんですよ。
利益を出さない限り、その君のやりたいことも実現できないんだよ、と思ってしまうので。
そこにどうしても同じ窓を見ても見える風景が全然違うと言うことが、経営者と社員の間で難しい中で田中先生が週2で来てくださったことでうまく行き始めたのですか?
そうなんです。最初は大変失礼ながら先ほど申し上げたように手続きをしてくださるプロの方という認識だったのですが、社員が一人、また二人とご相談に行かしていただいている。最初は「?」と思っていました。俺じゃないの?と。
絶対思いますよね。順序が違うんじゃないかと。
それで田中さんから聞いて「そうなんですか?」ということが増えて行きました。
田中先生から素直に聞けましたか?
最初は聞けませんでしたね。
やはり社外の人間に俺の会社の何がわかるんだと。
はい。いつの間にか自分が愚痴っていました。
ご自身が先生に。
聞いてくださるので。それが傾聴力だと思います。
素晴らしいですね。具体的なエピソードはありますか?
いくらでもありますよ。先ほど皆さんがいらっしゃる前もちょうど愚痴っていましたから。それをやはり受け止めていただいて、その上でちゃんと聞いてくださるので。やはり社員さんの場合は聞いていなくても「わかりました」というパフォーマンスを取って終わらせようとするじゃないですか?だから喋っているとこちらが出なくなるんですよ。
そうしたらやはり田中先生の方から「今日社長が言ったのはどういうことなんですか?」と聞いていただけると「まあ、こういうことなんですよ」というお話をすると「それなら頑張りませんか?」みたいな感じで促してくれるので。
それとか酷い時には「だったら止めたら良いじゃないですか」と言われてしまい「うんうん」となってしまいます。
そこが今本当に私のガス抜きと言ったら大変失礼なんですけれど、田中先生がいなかったら事件が起きていますよ。これは本当です。
そこもやはり一番最初に出会った時は社員でもなくて他所の外部の人間が自分の会社のことを何がわかるんだ、というのがスタートなんですけど、でも今の社長の話を聞いていると、じゃあ多分雇われていたら社長にそういうことを言いませんよね。
言わないですね。おっしゃる通りです。
それでは顧問の社労士の先生がそこまで言ってくれるかというと決まった業務だけですよね。
だから雇わない、いわば御社の人事課長的な役割をしてくれて、自分にも思っていることを言ってくれたり、雇われていないからこそ傾聴が出来たりということが今お話を聞いていて思うのですが社長はどうですか?
おっしゃる通りだと思います。直接雇用であるとどうしても言えなくなってしまう部分があると思いますし、役員さんの中でも言ってくださる方と言ってくださらない方がいるので、やはりお人柄にもよる所は多いと思うのですが、そう言った意味では私も言いやすい関係を築かせていただいていると思っています。
本当におっしゃる通りだと思います。新しい形なのかも知れませんね。
また経営者としては当然常にPLの電卓が入っていると思うのですが、この時間とこのコスト投資に対してどれくらいの効果があるのかというのを常に考えているのが経営者じゃないですか?
ずばりご本人を目の前にして何ですが、コスト対パフォーマンスで言うとどうですか?
むちゃくちゃいいんじゃないですか?
そうですよね。
本当は2、3倍はかかるんじゃないですか?
ありがとうございます。
お得感があるということですよね。
お得感という言い方は失礼になってしまうと気を揉むくらい有難いです。ただただ有難いとしか思えません。
経営者の方って、そこがやはりシビアに見られるので。
そうですね。最初は私もだから田中さんとの大変失礼なエピソードでいうと、昔出会った頃は朝礼というのをやっていて、田中先生にもお言葉をお願いした時に「体育会系みたい」と言われて「うちは体育会系ではありません」と噛み付いたのは覚えていらっしゃいますか?
覚えています。挨拶がすごく元気よかったんですよ。若い男性が多いので。それでちょっとびっくりして体育会系なのかな?と素直に言いました。
実際私はスポーツを確かにやってきて、サッカーを20年近くやってきました。ナショナルチームに引っ張られるくらいやってきました。
それと同時に司法試験の勉強もずっとやってきたので、本当に文武両道だと思ってやってきました。
やはり経営者に向いてらっしゃるんですね。でも自分の思うことをやりたいけれど自分の動かせるリソースは決まっているので、どうしても人に振ったり人を雇ったりして、対価を払いながら事業を展開させていかなければならないのだけれど、そこに色々な悩みがある。それをいわば伴走してくれるという。
野田社長にとって、田中先生はどんな存在ですか?
本当に人事の完全パートナーです。田中先生なしではうちの会社は崩壊します。
今後田中先生と2〜3年後を見据えて、取り組んでいきたいと思う人事政策は何ですか?
本当にやりたいのは評価制度をちゃんと確立したいです。
よくあるのはベンチャー企業なり、中小企業というのは社長の感情で給料が決まるとか気分で決めているとか不平等なことがある嫌いがあって、中小企業であればあるほど社員さんと距離が近いからこそ、意外にそんなことはなくて、こちら側としてはクリーンにやっているつもりなのですが、制度がないために確立出来ていない。なので憶測が飛んだところで止める手立てがない、という意味では本当はそういうことがして行きたいのですが。
さすが法学部ですね。
ありがとうございます。
きちんと規範に則って。
そうなんです。「感情じゃないよ、君たちも計算すれば出るでしょう」というようにしたいです。
なるほど。公正な、ちゃんとチャンスはありますよ、ということですね。それを段階を踏んでやって行きたいということですね。
中小企業さんで人に悩まれている経営者さんがいらっしゃるとして今ご自身が会社として契約されているパートナー人事課長ってお薦めするとしたらどういうレコメンドでコメントされますか?
まず採用されてみてくださいということですね。やってみないと私がそうでしたから。どちらかというと失礼ながら私はYESもNOもなく有無を言わさずいらっしゃったところから始まったので。
それで最初おっしゃって下さったように、失礼ながら「社員の心は僕しか押さえられないよ」と思っていたので。
確かに法的、労働的な、法律に則った制度だったり、提出物、期日、書類作成はそこまでは手が回らないから「それをサポートしていただけたらいいや」から始まってしまっていたので。
でも結局社員さんって先ほども申し上げたようにみんなそれぞれ心があるので、その一つじゃないんですよね、対応の仕方が。
だからそれを多分詳しく直接はお伺いしていないですけれど、田中先生の場合は一人一人とちゃんと向き合って下さっているんだなと思います。
僕が一回びっくりしたのはだいぶ年下の若いやつなんですけど、ちょっとヤンチャなやつがファーストネームで田中さんのことを呼んでいて、僕は「田中さん」とか「田中先生」としか呼んだことがないのに何かが体の中で走りました、その時に初めて「どういう先生なんだっけ?」と思って田中さんのホームページを見ましたね。
初期だったんですね。嫉妬しませんでしたか?
嫉妬だらけですよ。何が起こっているんだかよく分からなかったですね。
でも経営者を嫉妬させるような社員の気持ちや心を掴むという能力がないと人事のプロと言えないかも知れませんね。
田中先生はプロだと思いますよ。いつの間にか私までファンになってしまいました。
そうすると中小企業の社長さんや今成長中の社長さんだと、そういうことよりもまずは売上を上げてある程度整って規模が行ってからうちはそういうことをやりましょうという人がすごく多いのですがどう思われますか?
私がまさにその渦中の人間だったので、まだ早いと思っていました。人事は僕が兼務してますから見たいな感じでした。でも結局そこが整っていないとそれが原因で一人辞めて行くんですよ。
中小企業だとこっちは思っていて、ベンチャーだから今からだと思っていても社員さんは思っていないんですよね。
一つの会社ですからね。本当に気持ちはすごくよくわかります。
フルに雇うのではなく、非常にコストコントロールしやすいし、必要なピンポイントで週一とか週二で活用されているというのは結果的に野田社長はご自身の選択として非常に良かったなという感想ですか?
良かったです。先ほどもちょっとお話ししてましたけれど、田中先生がいらしてから離職者が急激に減りました。
素晴らしいですね。原因は客観的に経営者視点で見ると何故だと思いますか?
やっぱり一人一人に対するケアやコミニュケーションが出来ていて、彼らからすると一定の会社に対する信頼を人事の側面として、経営者は大きくしたい、このサービスを世の中に広めたいというパッションやビジョンがあるのですが、彼らは自分の即生活であったりが一番大事なので、そこに対する悩みがあったり、細やかな対応をしてもらえなかったりするとどうしてもそこがストレスになってしまうんですよね。
ですからそういった部分を田中先生がサポートしていただくことによって、さっきの名前で呼んだ件ではないですが、そういう話につながって来て、僕が「え?」と言った瞬間に「ヤバい!」みたいな顔になりました。
これは冗談ですけど、逆に言うとすごいなあ、と思いました。それにこんなことはなかったので嬉しかったですね。
野田社長には素晴らしい話を聞かせていただきました。これが最後の質問ですが、改めて人事のプロの求められるもの、求めたいものは経営者として何ですか?
社員と向き合ってくださることですね。ずっと同じお話をしていて大変恐縮なのですが、経営者というのはやりたいことだらけで思いが凄いのです。思いが先にあって言語化出来ていなかったりすることがあります。
社員さんが近づきにくかったりしますが、でも彼らからすると例えば「結婚するんです」とか「体調が悪いから帰ります」というのを僕のオーラで言えない空気を作ってしまっている時が多々あるんですけど、そこを人事の田中先生のようなスペシャリストが本当に向き合っていただけると、彼ら彼女らは本当に安心して笑顔が増えたような気がしますね。
これからも引き続き伴走者としての田中先生と引き続きということですね。
よろしくお願いします。
今日は素晴らしいお話を聞かせていただいてありがとうございました。